American Style アメリカン・スーツ ― “実用主義”が生んだ服の民主化
規律の英国、感性のイタリア、そして合理のアメリカ。スーツは民主化によって“働くための服”となった。
英国がスーツを「規律」で作り、イタリアが「感性」で軽くしたなら、アメリカはそれを「機能」で普及させた国でした。スーツを「信頼の制服」から「働く人のユニフォーム」へ――それがアメリカ的スーツ文化の核心です。
ウォール街とブルックス・ブラザーズの革命
ニューヨークのBrooks Brothersが、英国仕立てを簡略化した既製スーツ(Ready-to-Wear)を発表します。当時のアメリカは産業化の波の中にあり、職人による一点物よりも大量生産により「誰でも手に入る均一な服」が求められていました。
彼らの革新は、寸法よりも標準化を優先したこと。身体に完璧にフィットしなくても、「誰でも同じように誠実に見える」――まさにアメリカでスーツは民主化されたのです。
主な特徴
シルエット
量産に適したボックスシルエット(箱型の型紙)。
ショルダー
パッド控えめで、どんな体型にも合うナチュラルショルダー。
目的
軽量化とコスト効率を重視し、都会的で機能的な「働くための服」。
ディテール
ベルトループ開発によりウエスト固定を実現。
アイビーリーグが作った「アメリカン・トラディショナル」
1950年代、アメリカ東海岸の名門大学群――ハーバード、イェール、プリンストンなどの学生たちは、スーツを“堅苦しい服”ではなく“知的カジュアル”として再解釈しました。
ここで生まれたのがアイビースタイル(Ivy Style)。ブルックス・ブラザーズのNo.1サック・スーツを代表とするこの潮流は、肩パッドを排し、ナチュラルショルダー・3つボタン・フックベントなどを備えた、“大学生がそのまま街へ出られる服”として定着しました。
- ナチュラルショルダー(肩に丸み)
- 3ボタン段返り(ロールの自然な崩れ)
- ストレートパンツ(ノープリーツ)
- センターフックベント(背中心の切れ込み)
- 白のオックスフォードシャツ+レジメンタルタイ
これはまさに、「エリートの制服」を「学生のスタイル」に変えた革命でした。
American Styleが生み出す印象
アメリカでは、スーツは特権の象徴ではなく、チャンスの均等を与えるユニフォームになりました。誰もが同じテーブルにつけるように。それは「成果で語る」社会において、信頼を先に見せるための制服でした。

特徴:実用的・量産志向・機能性重視
肩
ナチュラルショルダー(パッド控えめで丸みあり)。
胸
平坦で構築感が弱く、自然な落ち感。
ウエスト
ほぼ絞りなし。ボックス型シルエット。
ラペル
ナロー(細め)。控えめでシンプル。
ジャケット丈
中庸〜やや短め。機能的で活動的。
ベント
センターフックベント(中央に1本の切れ込み)。
パンツ
ノープリーツ・ストレートカット。裾幅18〜19cm。
ボタン配置
3ボタン段返り(3-roll-2)。上品で自然なVゾーン。
素材
軽量ウール・ポリエステル混。量産性・コスト効率を意識。
印象:民主的・清潔・機能的。
20世紀以降のビジネススーツの標準形。
20世紀以降のビジネススーツの標準形。

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目次|Contents
07 To begin with|はじめに
- Introduction
- 金融エリートが実施するスーツの外見戦略
10 Chapter 1:各国のスタイル
- British Style
- Italian Style
- American Style
- Japanese Style
19 Chapter 2:ファイナンシャル・エリート
- 空気とスーツ、AIと着こなし
- Goldman Sachs
- Morgan Stanley
- 野村証券
24 Chapter 3:金融系男子
- 江戸時代:両替商
- 幕末:勘定奉行
- 大正ロマン:銀行員
- バブル期:証券マン
- 投資銀行:アカウントマネージャー
- 日系銀行:法人営業
- 資産運用系SaaS会社:CEO
32 Chapter 4:スーツのロジック
- Style Logic
- 色彩心理学
- 柄数
- Demonstration
- 【コラム休憩】Style or Trust?
45 Chapter 5:TPO別スーツ攻略
- Office Work 1
- Office Work 2
- Office Work 3
- Office Work 4
- Client Meeting 1
- Client Meeting 2
- Launch Event
- Business Dinner
- Internal Study Session・Home Party
- Date
- Cherry Blossom Viewing
- Beer Garden
- BBQ
- Hotel Lunch Buffet
- Concert
- Horse Race
- Yatai
- Bicycle to work
- Apology
- Award Ceremony
- Job Interview
- Golf
- Wedding
- Funeral
77 Chapter 6:スーツを科学する
- Sizing だらしなさと洗練の分かれ道
- Sizing 「ドロップ寸」と「テーパード」
- V-zone 顔の延長としての戦略的設計
- Front Style シングルブレストとダブルブレスト
- Sleeve 国別スタイルで選ぶ袖口ボタンの美学
- Belt Type ウエストデザイン
- Pleats プリーツ(タック)の意味と印象
- Breaks トラウザーズの裾丈が映す、スタイルの本質
- Long Hose ロングホーズで「肌見えレス」を叶える
- Jacket Style
- 【コラム休憩】ブラックスーツ
- Drape ドレープとは?
- Weight 季節を纏うー目付が決める快適な装い
- Pattern ストライプ系・チェック系・千鳥格子など
- Fabric スーツの本質は繊維の美学に宿る
- Match the tone フォーマル度・カジュアル度の統一
- Maintenance スーツを育てるためのメンテナンス術
- 【コラム休憩】スプレッツァトゥーラ ー崩すことで生まれる品格
99 Chapter 7:Dress Shirts
- Collar シャツの襟の種類別フォーマル度
- Shirt’s Front Style 前立ての種類別フォーマル度
- Shirt Fabric 生地の種類別フォーマル度
- Tie ネクタイの柄の種類
- Knot ネクタイのノットの種類
- 【コラム休憩】クレリックという選択
108 Chapter 8:Beyond Suits
- Pocket Square チーフの折り方
- Coat コートの種類別フォーマル度
- Types of Shoes 革靴の種類別フォーマル度
- Color of Shoes 靴の色選び
- Leather Sneaker ビジカジの新定番
- Eyewear 顔の印象を補完する眼鏡の力
- Perfume 香りは装いの一部-男性のための香水
- Underwear カルバンクライン以外の選択肢
- Watch 最大公約数の正解、ROLEX
- 【コラム休憩】モテる着こなしについつい釣られていませんか?
121 Chapter 9:肌管理
- Perfume 男性のための香水の選び方
- Lotion 潤いの無い自分に終止符を打つ
- Mewing 輪郭の投資としての習慣
- Lip 会話中に見られるポイント
- Dental Care 口元のマナー
- Grooming 毛の徹底管理
131 Chapter 10:Outside the context of suits
- 【コラム休憩】休日に着る服(Spring/Summer/Autumn/Winter)
- Dining in a vintage building 古民家
- Table manners テーブルマナー
- Yokocho 東京横丁巡り
- Wine メニューを見て一言言えるだけでよい
- Dog Run 都会の社交場
- Jogging 皇居ランの儀式
- Work Out スーツが似合う体型になる
- Graduate School いつまでも学びを
- Books 外資の現実を肌で感じたい方に
- Job Change Agent 外資系転職エージェント
- Job Interview 転職面談
153 Chapter 11:年収がバレる着こなし
- 投資思考から抜けられないエリート
- 着こなしから読み取れる経済感覚・習慣・知識
- シャツ・靴・コートに見る“経済の顔”
161 Chapter 12:NG集
- Office Work 1 Spring & Summer
- Office Work 2 Summer
- Office Work 2 Winter
- Client Interview 1〜3
- Date
- Apology
- Job Interview(転職面談)
- Wedding
- Funeral
174 Chapter 13:NG集 in LINEグループ
- 春デート
- 夏デート
- 秋デート
- 冬デート
185 Before You Go:最後に
- 最後に
- 参考資料