日本の毛織技術を陰で支える|国島毛織という遺産
御幸毛織のように広く知られた存在ではないものの、愛知県一宮市に本拠を構える「国島毛織」は、日本の毛織産業の根幹を支える中核的メーカーの一つである。戦後の日本復興期から高度経済成長期にかけて、堅実な品質と安定供給で多くのOEMブランドを支えてきた。
国島毛織の技術と役割|“縁の下”のブランド哲学
創業は昭和初期、もともとは家内工業として出発したが、戦後復興の機運のなかで紡績・整理・染色までを一貫して行う体制を構築。国島毛織が得意とするのは高耐久性の混紡素材(ポリエステル×ウール)や、大量生産に適した平織・綾織のベーシック素材だ。
この背景には、日本国内のスーツOEM需要や、制服・官公庁・法人向けの安定供給体制がある。織機には津田駒製の最新鋭エアジェットを導入しつつも、「安定性」「ロット管理」「再現性」の3軸を徹底することで、“縁の下の信頼”を担保する生地供給体制を維持している。

SAKURA:「国島のポリウール混紡って、制服系のスーツで本当に多く使われてるんですよ。風合いも安っぽくないし、何より丈夫。」
制服・法人スーツにおける信頼素材
国島毛織の生地は、百貨店やセレクトショップに名を出すことは少ないが、実は“知らぬ間に着ている”ケースが非常に多い。以下は主な用途領域である:
- 大手企業のユニフォーム:色ブレの少なさと在庫対応力が評価され採用
- 官公庁・教育機関:ポリエステル混の防シワ性・高耐久性が必須条件
- アパレルOEM:御幸毛織や葛利毛織のバックアップ素材として高頻度で使用

ANTONY:「“見えないブランド”だけど、使ってる側からすると“なくては困る”存在なんだよね。量産でも妥協しないって、実はすごく難しい。」
★ 引用:『日本の毛織文化と地方工業地帯』– 繊維産業アーカイブ年報, 2022
★ 補足:『法人ユニフォームに求められる生地要件』 – 日本制服工学会誌, 2021
★ 補足:『法人ユニフォームに求められる生地要件』 – 日本制服工学会誌, 2021
結論|“裏方”でありながら産業の骨格
国島毛織は、華やかなブランド価値を謳うことなく、ただ黙々と安定と品質を守ってきた。だがその技術水準と産業的役割は、御幸毛織や大手ブランドと同様に、日本の服飾文化を根底から支えている。
「選ばれること」は表層的な価値であることが多い。しかし、「選ばれ続けること」は文化であり、信頼そのものである。国島毛織は、まさにその体現者だ。